
現在でも人気の高いデンマーク人デザイナー、ハンス・J・ウェグナーの”Yチェア”
1940~60年代に、家具のデザインに活気と華やかさがあり、当時重要な役割を演じたのが、北欧のデザイナーだった。
ヨーロッパの北の辺境から生まれる家具がなぜ支持されたのか。
それはインターナショナルでモダンな印象でありながらも、地域性、固有性を有していたからだと考えられる。
ウェグナーは、靴のマイスターであった父の影響もあり、子どもの頃から近所の家具工房に出入りしては木を削って遊んでいた。
23歳の時にコペンハーゲン美術工芸学校家具科へ入学し、デザインを学ぶ。
その後、ある書物で目にした、中国・明代の“圏椅(クワン・イ)”という曲線の美しい椅子が運命を変えることになる。
当時のデンマークでは、「デンマーク近代家具デザインの父」と呼ばれたコーア・クリントが提唱した、「過去の名作にルーツを求め、現代の暮らしにあわせる=リデザイン」の手法が重視されていた。
ウェグナーもこのプロセスにのっとり、圏椅からリデザインを繰り返し、1950年にカール・ハンセン&サン社からYチェアを発表するにいたった。
木を熟知し、椅子の製法にも通じていたウェグナーが目指したのは、上質でありながらも安価で機能的、庶民のための椅子だった。
実は、この椅子の正式名称は”CH24”という。
もし、愛称の所以となった背中のYのパーツが幅のある板であれば、笠木のカーブに沿うように三次元成形しなければならないが、3点で結ぶYのかたちであれば、二次元成形で済む。それは製法の簡略化、コストダウンにつながった。
そして結果的に、Yチェアの名で時代を越えて人々に愛されることとなった。
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